血圧は季節によって変動します。夏の間は基準値内であったとしても、冬になると上昇することが多いです。なぜ冬は血圧が上昇しやすいのでしょうか。それは、冬に寒さを感じると自律神経が働いて、体温を逃がさないようにと手足の末梢血管を収縮させるからです。血液を体の中心部分に集めようとするので、特に体の中心部分の血圧が高くなります。

また、寒い時期によく食べる鍋物は、意外と塩分が多いです。〆にラーメンやうどんを食べて、その汁を全部飲み干すと、6gや7gの塩分を取ってしまうこともあります。鍋物の塩分プラス〆のラーメンの塩分で軽く8gや10gの塩分を取ってしまいます。便利な市販の鍋物用のつゆも、塩分が多いです。冬に美味しいおでんは、ちくわやはんぺんなどの練り物自体も塩分が多く、その上に汁が染み込んでいます。スーパーでパックで売られているおでんの1人前の塩分は5g ~6.5gくらいあります。冬は、塩分も過剰になりやすい季節です。

冬は、トイレで倒れる人やお風呂やベランダで倒れる事故が発生しやすい時期です。また早朝のゴミを出しに行って倒れるというケースもあります。このようなケースでは、動脈瘤破裂による脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの脳血管疾患や心臓疾患が圧倒的に多いです。それは、暖房の効いている暖かい部屋から寒いトイレやお風呂や屋外に出たことが引き金になっています。温度変化が急激なため、血圧が急に上昇したことが原因です。このように、気温の差によって血圧が急上昇することをヒートショックといって、脳動脈瘤破裂の大きな原因だと考えられています。

高血圧の人の中には、早朝に血圧が急上昇するタイプの人がいます。早朝高血圧と呼んでいますが、このようなタイプの人は、血圧が非常に変動しやすい傾向があります。血圧の急激な上昇が起こると、血管が詰まったり破けたりして脳卒中や心筋梗塞になるリスクが高くなります。脳動脈瘤破裂が脳出血という状態、脳の血管が詰まった状態が脳梗塞、心臓の血管が詰まった状態が心筋梗塞です。このような人は、心臓にも負担をかけて心不全や不整脈を起こすリスクも高くなります。脳卒中の時間別発生数を見てみると、午前10時から12時が最も多く、次いで午前6時から8時が多いです。急性心筋梗塞では、午前9時から12時が最も多いです。

寒い冬の朝は、特に気をつけたい時間帯です。早朝の上の血圧(収縮期血圧)が高くなるほど、心筋梗塞や脳卒中の発生率も高くなっています。収縮期の数値が125mmHg未満の人と155mmHg以上の人を比べると、後者は心筋梗塞や脳卒中を起こす危険性が約6倍だという調査報告があります。冬に血圧をあげないように工夫して生活する心がけが必要になります。

冬に血圧をあげないようにするコツ

冬に脳卒中や心筋梗塞で倒れた人の多くは、「ちょっと新聞を取りに行くだけだから」、「ちょっとベランダに置いている灯油を取りに行くだけだから」と、室内にいた時の服装で外へ出たりベランダに出たために倒れたという人が大半です。冬は、ちょっとの間外やベランダに出るだけであっても、ジャンパーなどの上着を羽織ったり手袋をはめたりしてヒートショック事故に遭わないようにしましょう。お風呂に入る時は、事前にシャワーで湯気をあげておく、浴槽の蓋を開けておく、脱衣所にも電気ストーブなどを置いて居間と脱衣所との温度差を少なくする、といった工夫が大切です。また、旅行に来たのだから露天風呂に入らないと損だとばかりに、寒いのを我慢して露天風呂に入る人が少なくないようですが、血圧が高い人の寒い日の露天風呂はお勧めできません。ヒートショックの事故に繋がらないためにも、冬の露天風呂は遠慮しましょう。

鍋物は野菜がたくさん摂れるというメリットもありますが、塩分が多くなりがちです。〆のラーメンやうどんの汁は残す、おでんのつゆや練り物は控え目にする、市販の鍋物用のつゆではなく、できればカツオや昆布でしっかりとだしを取ったつゆにする、などの工夫が必要です。そして、寒いからと言って動かずにじっとしていては、血液の循環も悪くなります。部屋の中で良いので、体を動かすようにしましょう。テレビを見ながら足踏みをするだけでも体が温まってきます。これらのことに気をつけて、ヒートショックに遭わないようにしましょう。